9月15日例会


9月15日 移動例会「西九州新幹線 試乗会」

新幹線「かもめ号」試乗の印象記

会報委員 緒方 聖

 

 西九州新幹線の構想が本格化した当時、筆者はそれほど長生きはしないし、自分にとって無縁の夢物語と思い、興味を抱くことはなかった。しかし、実際に工事が着工し古い諫早駅の駅舎が解体され、見る間に現代風に変貌する諫早駅周辺の動きを眺める内に、もしかすると乗れるぞという思いが強くなってきた。

 そして新幹線開業が2022年9月23日、オープンまでのカウントダウンが始まれば、自ずと気持ちは高揚するものだ。

更に、試乗会が直前の9月15日、ロータリーの例会日と重なり、異例の移動例会となった。試乗の招待葉書まで送られると、小学生の頃の遠足前夜の気持ちになり、遠い日の追憶がそうさせたのであろう。試乗当日は早目の昼食を済ませ、諫早駅の待合室に集合、乗車の手続きを取りながら次なる行動の指示を待つこととなった。その日の行程は諫早駅―武雄温泉駅―長崎駅―諫早駅にて下車という順が組まれていた。

 待つことしばし、かもめ号が静かにホームに入って来るや駅員の誘導に従い、新装なった列車に乗り込んだ。座席はゆったりとした造りで、ゆとりある空間設計と感じた。航空機並みのやや小さめの窓枠から、我が町諫早の景色を一枚の絵画を見る思いで眺めていた。

 かもめ号は軽やかに諫早駅を離れ、見る見るうちにスピードを増し、車窓の風景が飛ぶように後方に消え去る。新幹線の工事が車両の高速を優先して直線コースに近くなされているので、この路線は地下のトンネルが多く山塊の中をくりぬいた真っ暗闇の貫通路の中を走り続けた。武雄温泉駅は意外にも近かった。

 帰路もトンネルの闇の中、列車は長崎駅へ向けて引き返しており、車両の心地よい振動に眠気を誘われ、時折パッと明るくなる景色にも、もう反応を示さなかった。見慣れた景色と思ったらもう諫早、窓越しに島鉄の車両がゆっくり動いているのを目にとめて、何とも懐かしい思いがした。

 諫早を出て間もなく長いトンネルに入ったと思ったら、7分足らずで長崎……。「トンネルを抜けると、もうそこはながさきだった 」残暑の熱気と底抜けに明るい光に満ちた港町長崎、終着点のホームの遥かな遠景には碧い海と長崎の街。乗客は下車するや、かもめ号の運転車両を撮影するための場所探しに忙しく、やがてカメラの放列がにぎやかに。それぞれの想いの風景をカメラに収めると、再び列車に戻った。帰路、諫早までは息もつかせぬほどの速さに驚かされた。

 仕事であれば、この速さは貴重であろう。でも本当の旅心は、ぶらり、ゆっくりが合っているような気がする。